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その時、私は重大なミスを犯してしまった。それは月景を愛祐ではなく月景と呼んでしまったこと。別に付き合ったばかりだし名字で呼んでいてもおかしくはないけど、朝私は愛祐と呼んでいたしその後もそう呼ぶようにしていたから違和感を持たれるかもしれない。そして案の定、
「あれ? あんた愛祐くんのことくん名字で呼んでたっけ?」
「えっ、あ……いや、そうだよ。ずっと名字で呼んでたけど……」
今はこれにかけるしかない! どう言われるか……。うまくはいかないと思うけど。
「そんなわけないじゃないの。私この耳でしかっり聞いていたもの。あ、まさか。も、もしかして……」
ゴクリ……。
「付き合い始めで、愛が足りてないのね!」
「……えっ?」
予想外の答えで戸惑う。まあ確かにフリなんて気付く人普通にはいないのかもしれないけど。
「まだ愛がないのなら私にだってチャンスはあるはずよね……」
そんな風に呟いちゃってるよ……。どうしよう、勝負を挑まれちゃったりするのかな。そんな面倒なことしたくないし、それじゃまるで私が取られたくないから頑張るみたいじゃん。確かに表面上の私は月景のこと好きって言ってるけど。
「よし、決めたわ! 一週間、一週間だけチャンスを頂戴。そしたら私が愛祐くんを落として見せるから。もしそれでも無理だったら、私は引いてあげる。今後付きまといもしない」
自分に自信満々だなぁ。月景はどうするんだろう。私は別にそれで引いてくれるのならいいけど……。
「一週間、長えな。その間お前は俺に付きまとうのか?」
「そうよ。でもそれを越えたら付き合うにしても付き合わないにしても、愛祐くんは幸せになれるのよ?」
月景はどうするんだろう……。気になって目を向けてみる。すると考える素振りを見せた後、すっと口を開いた。
「本当だな、本当に付きまとわないんだな?」
「うん、約束するわ」
「真奈もいいか?」
「いいよ。あんたが好きなようにすればいいんじゃない?」
そしてそれから、地獄の一週間が始まってしまったのだ――。
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