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failure
さくらが満開に咲いている、新年度の朝。黒髪の長いツインテールを揺らしながら、私は誰も来ないような時間に学校へ来ていた。クラスを確認して玄関へ入る。こんな早くに来たのは他でもない、好きな子の下駄箱にラブレターを入れるため。古いやり方かもしれないけど、私はこのやり方が好き。運よく彼とも同じクラスみたいだ。
誰もいないことを確認して月影優弥の名前を探す。
「あ、やっと見つけた!」
下駄箱に手紙を入れようとする……けど、緊張しいるのか手から手紙が離れない。もしフラれたらどうしよう。幼馴染とはいえ、そんなことになったら元の関係に戻れるわけない。でも今年は中学三年生。受験もあるし、今のうちに告白しておかないと。
意を決して、手紙を放り込む。ふうっと息をはいた。重労働を終えた気分。こんなに緊張するなんて思ってもみなかったから。
でもこれで終わりじゃない。放課後に学校のシンボルであるおっきな桜の木の下で待ってて、なんていうことを書いてあるから、その時間に私も行かないといけない。それが一番の緊張どころ。
そんなことをぐるぐると考えていると、外から声が聞こえてきた。もうみんなも登校する時間みたい。私もそろそろ中に入ろうと自分の下駄箱を探す。さっきより簡単に見つかった。下駄箱に靴を入れて、私は小声で気合を入れる。
「頑張ろう!!」
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