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ナースステーションに戻り、一般の人に見えない位置まで行き花冠をごみ箱に捨てた。
「なにそれ」
「ほら、今日母親が死んだ子。その子がくれたの」
私は手を洗いながら答える。
「あーあの子か。あんたのこと気に入ってたもんね」
「なんか待っててねとか言われたわ」
濡れた手を紙で拭く。
「プロポーズ?僕が大きくなるの待っててねってこと?やるー」
腕で小突いてくる。うざいな。
「さあ」
「ねえねえ、それってーひょっとしてー母親を殺された怨みを晴らすの待っててね、とか?」
話を聞いていたのか別の同僚も話しかけてきた。
「なんでそうなるの?」
「だってーシロツメクサの花言葉って復讐でしょ?」
彼女はにやにやしながら答えた。
「え、幸運とかじゃなかった?」
「でもー、私の復讐説の方がしっくりくるじゃない」
「まあ確かに」
人が子供から花冠貰っただけでここまで盛り上がれるのか。
私はもう飽きてカルテの整理をしていた。
「ねーねー、どっちだと思うー?」
「別に外に行ったらシロツメクサがあって花冠を作った。そして母親の担当だった私にくれた、それだけでしょ」
「つまんなーい」
「でもさ、母親死んだ子が花冠作って待っててとか言うの変よね。まさか、待っててって言ったのは母親に向けてで、後を追うつもりなんじゃ!」
あほらしい。私は部屋を後にした。
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