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私達は病院から出て、近くの公園のベンチに座った。
少し遠いが人がいないわけではない。会話内容までは聞こえなくても叫べばどうにかなるはずだ。
「手紙受け取ってもらえましたか」
「はい」
「あんな男ではなく、僕を選んでくれませんか。僕の方が財力もあるし、かっこいいし、若いしあなたへの愛は負けません」
男は私の手を握り愛を囁いてくる。
「あなたの目的は何ですか。付き合ってどうするつもりですか」
「どうって」
「復讐、じゃないんですか。職場にあんな花束も贈ってきて、あなたの母親を殺した私が憎いなら、そう言えばいいのに」
「復讐?花束ってなんのことですか?」
私は立ち上がり声を荒げた。
「とぼけないで、あなた以外あんなの贈ってくるはずないでしょ!」
「ちょっと、ちょっと待ってください!何か勘違いしていますよ。僕は1年前足を骨折して入院してたときにあなたに一目惚れしたんです!母親とかなんの話ですか?」
「え…誰?」
骨折…?覚えていない。ていうか患者の顔なんてどれも同じに見えるし。
「そんな、僕は…ぼ…」
男は急に前のめりになって倒れた。
「大丈夫ですか?」
警棒を持った男が、ストーカーの後ろに立っていた。
「え?」
「この前ストーカーの被害届出された方ですよね。この人ストーカーでしょ?もう大丈夫ですよ」
「はぁ」
警官というものはこんな急に警棒で人を殴るものなのだろうか。
…それよりも話をどこから聞いていたのだろうか。
警官はストーカーの両手に手錠をはめた。
「念の為、事情聴取したいので署までご同行願えますか?」
「…はい」
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