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警官は男をパトカーの後部座席に寝かせ、私を助手席に座らせた。
「あの、いつから男の後ろにいたんですか?」
「病院からですよ。巡回していたときにたまたま見かけて、お知り合いかなとも思ったんですが…もめてる様子だったので」
「そうだったんですか。ありがとうございます。助かりました」
「いえ」
気まずい。この警官はやはり先程の話を聞いて私を疑っているのだろうか。
「このストーカー、あなたの思い当たる方とは別だったんですか」
「え?」
「さっき、だいぶ喋っていたのに誰かわからない様子でしたから」
こういうときは自分から言ったほうがいいだろう。
「…昔、ある少年からシロツメクサの花冠を貰ったんです。その日は、その子の母親が死んだ日で…。私は母親の担当だったから…てっきり私が殺したって思って、恨んでるんじゃないかって思ってたんです」
私は目元を手で押さえた。…涙は出ていないけど。
「どうして、その子があなたを恨んでいるって思ったんですか?」
「………どこか…私に罪悪感があるからかも。私がもっと早く様態が急変したことに気づいていれば、助かっていたかもしれないって」
「ああ、すみません、あなたを責めるつもりで言ったんじゃないんです。ただ、シロツメクサの花冠をくれた子は、あなたが好きだった可能性もあるじゃないですか」
警官は慌てて私の方をチラチラ見てくる。
「…同僚からシロツメクサの花言葉は、幸運と復讐があると聞いて。それなら幸運よりは復讐の方が…合うかと」
「へーシロツメクサにそんな怖い花言葉もあったんですね。知らなかった。…では、シロツメクサの花束、お嫌いでしたか」
「え…」
ガチャン
私の右手がずっしり重くなった。
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