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「どういうことですか?」
僕が聞き返すと、彼女ははにかんだように笑って答えてくれた。
「あっ、すみません!説明もせずにいきなりお願いなんかして。私は、ヒカリと言います。以前はとても綺麗に咲いていた花畑、『Rainbow Garden』の管理人をしています。今、そのRainbow Gardenは、名前通りの虹色なんかではなく、ほとんどの花が枯れてしまっています。私は管理人として、どうにか元通りの、この名前にふさわしい花畑を再生したいんです。もう一度、多くの人々に綺麗だと言って笑っていただきたい。みなさんの思い出の場所にしていただきたいんです。
でも、管理人の私には、土地の管理の仕事や他の仕事が入っていて、難しいのです。私が動くわけにはいかない。なので、どうかお願いできないでしょうか。」
彼女が再び頭を下げる。
綺麗な花畑、Rainbow Garden。
その、再生。
いきなりのことでびっくりして、僕はどうすれば良いのかわからなかった。
断れば良いのか、受けるべきなのか。
迷った末、僕が選んだのは。
「……どんな様子なのか、見ることはできますか?」
見てから決めようという考えだった。
だが、彼女はみるみる笑顔になり、「ありがとうございます!!」と再び頭を下げた。
あまりにも勢いよく頭をあげたものだから、僕は思わず苦笑いをしてしまった。そしてそのまま彼女に尋ねる。
「どこにあるんですか?そのRainbow Gardenは」
「こちらです! ご案内します! あっ、でも、何か本を買うつもりだったのでは…? すみません、それなら先に……」
「いや、急ぎじゃないのでまた買いに来ますよ。案内お願いします。」
気遣うような表情をしてくれたヒカリさんだが、急ぎかもしれないし、本を買うのは諦めてまた今度買うことにした。
本当は今日買いたかったけど今回は仕方ないか。
「ありがとうございます! では、こちらです。」
にっこりと笑ってそう言うと、ヒカリさんは僕に背中を向けて歩き始めた。
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