さて、どこからツッコもうか

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 二人の結婚式から三年の月日が流れた。  とある病院にて。  病院のベッドの上で大量の汗を流し、苦しむ女性。あの結婚式で妻となった者である。  彼女のお腹の中には赤ちゃんが宿っており、今まさに産まれようとしていた。  『痛い痛い痛い痛い!』という花言葉を持つ花を助産師に渡す彼女。  なんと、その日はよりにもよってフラワーデーであった。  彼女の手を握り、『頑張れ!』という花言葉を持つ花を見せる夫。  声を漏らさぬよう必死に我慢する彼女。声を出してしまえば花にされてしまうからだ。花にされれば赤ちゃんにどのような悪影響を及ぼすかわからない。だから、声を漏らすことは何としても避けなければならない。  あまりの痛みに意識が遠退きそうになる中、ようやく待ち望んだ瞬間が訪れる。  子宮から取り出された赤ちゃん。男の子であった。一つの命が誕生した瞬間である。  『産まれましたよ』という花言葉を持つ花と、赤ちゃんを彼女に渡す助産師。  彼女は自分が母親になったのだと実感し、涙を流した。  『よく頑張ったな』という花言葉を持つ花を、夫が涙を流しながら彼女に渡す。  子供の誕生を喜び合う二人。しかし、ここで二人はある異変に気付いた。  産声を上げていない。  その異変に助産師も気付き、女性から赤ちゃんを渡してもらい、医師の元へと向かおうとした。  その時。  赤ちゃんの手に、いつの間にか一つの花が握られていることに気付いた。  その花が持つ花言葉は、 『おぎゃあ。おぎゃあ』。  それを見た彼女達は驚くと共に、ほっと胸を撫で下ろす。  そう。この赤ちゃんは生まれながらにしてフラワーデーのことを把握していた天才だったのだ。 【終わり】
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