0. 全ての始まり

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 そして沈黙の後、男が口を開いた。 「そこまで言うならば()く行くが良い」  そう言って若い男に手を(かざ)すと彼の周りに円形の光が現れ、彼を包み始める。 「かたじけない。  地上で"その時"を待ちます。  暫しお別れですね」  その言葉を言い終えると同時に光は消え、若い男はその場に倒れた。 「まるで屍のよう。  ああ、人間の為にここまでするなんて……」  女は倒れて動かない若い男を憐れむように見ている。 「彼の望みだ。仕方あるまい。  偶然か否か、たった今 "江戸" という世に彼奴(あやつ)の魂とほぼ同じ在り方の魂を持つ人間を見つけてな」 「あら、仏教とやらの天眼通かしら?  それは面白い事になりそうね。  我々はそなたの行く末を見守りますとも。  いつまでも……」 男が女を宥めるように言うと、女は先程と打って変わって心底楽しげ笑う。 「江戸の世はまだ先のようだがな。  我々は此処から彼の健闘を祈るとしよう。  さあ、彼の身体を安らぎの場へ運ぼう」 男がそう言うと女は頷き、次の瞬間3人の姿はその場から消えた。 ──この3人のやり取りは、"人間" の誰もが知り得ないものであった。
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