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その後、沖田は眠る事無く布団の中から夜の闇を見つめていた。
暫くして彼は聞き耳を立て、葵の規則正しい寝息を確認し、いつにも増して真剣な声音で斎藤に声を掛ける。
「一君、起きていますか?」
その呼び掛けに斎藤が返事をする事はなかったが、沖田は彼の気配が完全に消えていない事からまだ起きていると確信した。
「後生です、殿内さんと家里さんの事は葵さんには言わないで下さい」
沖田が低い声でそう呟いた瞬間、斎藤の布団がゴソリと動く。
「それがお前の決断なんだな、総司」
そして先程まで一言も発さなかった彼が、遂に口を開いた。
「はい。
俺は例え葵さんが隊士になろうとも……彼女を血で穢させはしない。
葵さんには、此方側の人間になって欲しくない。
彼女には壬生浪士組の光でいて欲しいのです。
だから、闇は全て俺が背負います」
「そうか……ならば、俺はお前を支えよう」
「一君、貴方って人は……。ありがとう」
沖田がそう言うと、斎藤の気配が完全に消えた。
どうやら彼も眠ったようだ。
そこで沖田も漸く目を閉じ、2人より一足遅れて眠りに着いた。
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