5591人が本棚に入れています
本棚に追加
そして思わず足を止め、己の腰に目線を移す。
「(まずい、私まだ1本差しじゃない!
壬生浪士組に加入して武士の道を進むのだもの、小刀(脇差)を買わないと)」
葵は会津藩お預かりの身になる己が、大小2本差しでない事──即ち武士の格好をしていない事に焦りを感じたのだ。
「葵さん、急に立ち止まってどうした?」
突如立ち止まった葵を不思議に思った沖田は足を止め、首を傾げる。
「いや……私、大刀しか持ってなくて。
小刀を買わないと、と思って」
葵が小刀を持っていない事を知った沖田は、葵の腰をチラリと見ながら言う。
「あぁそうか、小刀が無いのか。
そういう事ならば、この前市中で良い刀剣商を見つけたんだ。後で紹介するよ」
「本当!? ありがとう、沖田君!」
良い刀が手に入る、その喜びから葵は思わず屯所の廊下を弾む足取りで歩き始める。
足の動きを再開させたその後も沖田の案内は続き、2人は暫くの間前川邸の見学を行った。
最初のコメントを投稿しよう!