9. 芹沢一派

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前川邸を一周した葵と沖田は、庭にある井戸の近くに居た。 「これで前川邸の案内は終わりだ。 昼餉の後は、葵さんの小刀を買いに行こう」 「分かったわ。案内ありがとう、沖田君。 それにしても前川邸(ここ)はとても広いのね。 建坪が273坪、部屋は12間、畳数にして146畳。井戸は敷地内に計6ヶ所。 この人数ならば快適な暮らしができそう!」 葵は現在の人数であれば前川邸は広過ぎるくらいだと思ったが、沖田は首を横に振った。 「広いと思っていられるのは今だけかもしれない。 壬生浪士組は隊士を募っている最中だから、(じき)前川邸(ここ)も手狭になる筈だ」 「そうだったのね。 という事は、隊士が増えたら沖田君と一緒の部屋ではなくなってしまう事も考えられるのかしら? ずっと一緒だと良いなぁ 」 葵は沖田と離れる事が余程嫌であったのか、叱られた後の子犬のようにシュンとしている。 そんな彼女を見た沖田は今までに感じた事の無い違和感(・・・)を感じ、左胸に手をそっと添えた。 「(何だ……? 今、胸が高鳴った気がする。 気の所為だろうか)」 沖田が突如生じた胸の高鳴りに戸惑った直後、その戸惑いを掻き消すかの様に彼の腹がグルル、と音を立てた。
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