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「今帰ったぞ」
八木邸に辿り着いた芹沢がそう言うと、すぐさま新見・野口・平山・平間・佐伯──芹沢一派が門の前に現れた。
「おかえりなさい、芹沢先生。
後ろにいるのは沖田と……誰です?」
芹沢の側近中の側近、新見が葵を怪訝そうに見つめと、芹沢はニヤリと笑う。
「昨日入隊した……河合葵だ」
その一言に、芹沢一派全員が目を見張らせた。
「葵!? 例の、藤四郎を持つ女子ですか!?」
葵は芹沢一派全員が己と上総藤四郎について知っている事に驚く。
「何故私を知っているのです?」
思わず声を荒らげた、その時。
「俺が貴方の刀の手入れをしていた時に、芹沢先生が茎を……。その時、葵さんの事を話したんだ」
沖田が心底申し訳なさそうに言った。
「(成程、芹沢さんが沖田君から上総藤四郎を奪って銘を確認したのね。
その場に試衛館一派が居たから、土方さんや山南さんも私の刀が藤四郎だと知っていたんだわ)」
葵は沖田の言葉で全てを悟った。
「そういう事だったのね。
私は、私が上総藤四郎の所持者であるという事を隠したい訳では無いし……私の事を皆に話しても、何ら問題無いわ。
だから、気にしないで」
葵は落ち込む沖田を宥めるも、正義感の強い沖田は罪悪感を拭い切れていない様であった。
「でも……俺は貴方の情報を売るような真似をしてしまった」
どことなく、八木邸にはしんみりとした雰囲気が漂い始めていたが──。
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