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「(献金、ね……。
恐らく芹沢さん達は "金子を貸して欲しい" と言って、実際は金子を脅し取ったのね。
100両なんて大金、返すあてなど無い筈だもの。
やはり壬生浪士組が京の町民に壬生狼と呼ばれているのは、主に芹沢一派のせいに違いない。
至る所で押し借りを行って町民達を怯えさせているんだわ)」
葵は芹沢と新見に対し交互に視線を向けていたが、やがてその視線を芹沢の方へと定めた。
「(芹沢鴨……沖田君の言う通り、危険な男なのね。
この調子なら今後町民相手に何をしでかすか分からない。 これ以上壬生浪士組の評判を落とさぬよう、見張っている必要がありそう。
隊服の件で試衛館一派に迷惑を掛けたくない。
己の隊服は、己で調達しよう。
来国真の箱を売って得た金子が残っているもの)」
芹沢鴨という男の横暴さを初めて意識した葵はそう心に決める。
そしてこの気まずい空気を薙ぎ払う様にニコリと笑い、沖田に話し掛けた。
「金子の事なら問題無いわ。手元に9両程あるから、隊服の費用は私個人で何とかなりそうなの。
足りない分は食費を削って少しずつ支払おうかと」
「えっ ……わ、分かった。
芹沢先生、こういう訳で平五には行きません」
沖田は葵の突然の提案に驚きつつも芹沢の暴挙を防ぐ事を優先したのだろう。
彼に鋭い眼差しを向けながら言った。
「んだよ、つまんねェ」
芹沢は口を尖らせると、再び鉄扇を扇いで火照った顔に風を当てる。
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