9. 芹沢一派

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沖田と葵が八木邸から去った後────。 「沖田が俺達にあんなにも殺気を向けたのは初めてだな、新見。 俺の右腕なんて回りくどい言い方しないでよ、 素直に "俺の女" と言えばいいものを」 「ええ。 女の "お" の字も無いと思っていたあの沖田が、1人の女にあれ程まで執着していたとは」 芹沢は残っていた酒を飲みながら心底愉快そうに笑い、新見も先程の沖田の様子を思い出したのか結んだままの唇に微かな笑いを浮かべる。 「永倉の話によると、葵は試衛館一派(ヤツら)()らしい。 まあ、あれだけ器量が良くて性格も良けりゃあ惚れない奴は居ないわな。 この先、面白い事になりそうだ」 芹沢はそう言うと残りの酒を一気に流し込んだ。 「芹沢先生の仰りたい事は、つまり?」 芹沢の言葉に込められた意味を理解できなかった新見が問うと、芹沢は鼻で笑う。 「んだよ、分からねぇのかよ新見。 試衛館一派(ヤツら)に加え、この先壬生浪士組(ここ)に入隊した多くの隊士が葵に魅せられる事だろう。 沖田はその男共から、果たして葵を護り切れるのか……高みの見物と行こうぜ」 「ああ、そういう事でしたか。 沖田と葵……今後どうなるか、楽しみですね」 他の皆が泥酔して静まり返った部屋の中、2人は不敵な笑みを浮かべていた。
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