5591人が本棚に入れています
本棚に追加
『時が来たか……』
その瞬間、葵の頭の中に何者かの声が響き渡る。
「!?」
新たな客が来たのかと思い入口の方へと目線を向けたが、室内に居るのは刀剣商・沖田・自身の3人だ。
(気の所為か)
立ち止まっていた葵は別の刀を探すべく足の動きを再開させようとした。
『恐れる事は何も無い。
汝は我、我は汝。
今こそ、この刃を振るう時────』
するとその声が先程よりも大きくはっきりと聞こえた。
(この声は一体……。
誰かが私の脳内に直接語りかけてくる様な不思議な感覚がする。
私達以外に、ここに誰か居るというの!?)
緊張と恐怖で身体が強張り、一筋の汗が葵の頬を伝う。そして目を見張らせながら辺りをぐるりと見回した次の瞬間────。
日が傾き、薄暗くなっていた部屋に金色の閃光が走った。
「「「 ッ! 」」」
余りにも眩いその光にその場に居た3人は思わず目を瞑る。しかしその光は次第に弱まり、漸く目が慣れた皆はゆっくりと目を開いた。
「「「…………」」」
そして、目の前の "有り得ない光景" に言葉を失う。
3人の瞳にはあの八咫刀が部屋の隅でぼんやりと光り、まるで己の存在を主張しているかの様な光景が映し出されていた。
最初のコメントを投稿しよう!