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「(この刀は私のもの。そう強く感じる。
自分でも何故そう思うのか分からないけれど)」
そう、葵が感じた "何か" とは八咫刀が己のものであるという謎の確信であった。
葵は真剣な表情で立ち上がると同時に八咫刀を両手でそっと持ち上げ、柄を握っている右手を上へと動かし、抜刀を試みる。
すると────。
八咫刀の刀身はいとも容易く姿を現した。
その刀身は一見黒いが角度を変えると青い輝きを放つ不思議な色で、葵の髪色と瓜二つだ。
葵が刀身を鞘から完全に抜くと金色の光は次第に薄れてゆき、やがて消滅した。
「信じられへん。
300年の間、誰も抜刀できひんかった刀を……。
しかもこないな色の刀身、今まで見た事があらしまへん」
「本当に妖刀の類なのか……?」
八咫刀の刀身を目にした刀剣商と沖田はあんぐりと口を開け、呆然としている。
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*妖刀……ここでは妖気を帯びた刀のこと。
≠村正。
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