10. 未知の刀と謎の声

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そんな2人を他所に、葵は手中にある八咫刀をまじまじと見つめていた。 「(なんて軽いのかしら。 大刀と大差無い長さなのに、これ程持ちやすいなんて。 それにこの柄……驚く程、私の手に馴染む) すみません、先程 "300年の間誰も抜刀できなかった" と仰いましたよね? この刀は300年前に作られたという事ですか」 葵が刀剣商に問うと、彼は首を横に振った。 「口伝えで300年て聞かされてるだけで、実際は約500年間誰も抜刀した事があらへんかもしれまへん。 先代からは南北朝時代()には存在しとったという伝承もあると聞かされてます。 そやけど無銘どすし、本当にその時代のものかどうかまでは……。 兎に角、(えら)い古い刀で詳しい事は分かりまへん」 いつ・何処で・誰が作ったか判明していない謎の刀。(ほとん)どの人間はこの様な気味の悪い刀など、購入する気にならないだろう。 だがしかし八咫刀を抜刀できた葵だけは違った。 "この刀は、己が此処に来るのを待ち侘びていた" 勿論刀に意思がある(はず)が無いのだが、何故かそのような気がしてならなかった。 ----- *南北朝時代……1334-1392年の事。
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