10. 未知の刀と謎の声

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葵は再び柄を強く握り締め、刀剣商に声を掛ける。 「私、この刀をいただこうかと思います。 いくらです?」 己の直感を信じ、この八咫刀を京で生き抜く為の相棒にする事を決めたのだ。 葵の決断に刀剣商は目を丸くした。 「八咫刀を? ほんまどすか? この刀買い手ぇ見つからんで困っとったさかい、よろしければ持って行っとぉくれやす」 どうやら長年抜刀できる人間が居らず気味悪がられていた為、八咫刀はこの刀剣商にとって "厄介物" でしかなかった様だ。 葵の手中にある八咫刀の鞘をポン、と叩くと持っていけと言わんばかりに無言で頷く。 「いただいてよろしいのですか!?」 この刀剣商の申し出は隊服を自費で払うと決めた葵にとって、何とも有難いものであった。 そのため目を輝かせながら刀剣商を見詰める。 「勿論どす。 この刀の持ち主に相応しい人間は、抜刀する事ができたあんたしか居ぃひん思う」 その言葉を聞いた葵は刀剣商に深々と礼をした。 「ありがとうございます、大切にします!」 こうして葵は八咫刀を手に入れたのだが──。 これが八咫刀(×××)と彼女の "共生" の始まりであったという事は、誰一人知り得なかった。
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