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「「ご指導よろしくお願いします、沖田先生!」」
壬生寺の境内に着くと蔵之助と愛次郎が沖田に向かって勢い良く頭を下げた。
棒術が得意な川島は同行したものの、稽古を見学するようだ。
沖田は頭を下げる2人に返事をせず、代わりに口を開いたのは葵だった。
「何を言っているのかしら。
壬生寺に貴方達を連れて来たのはこの私。
つまり指導するのは沖田君ではなく、私よ」
「は……? 貴方が俺達の指導を?
少なくとも俺はか弱い女子と剣を混じえる気はありません。愛次郎は?」
「蔵之助と同意見です。
貴方では僕達の稽古相手にならないでしょう」
「(〜〜〜〜ッ!
この2人は一体何処まで私を嘗めているのかしら!? 今すぐ真剣で稽古してやりたいわ! )」
彼らの嘗め腐った態度に、葵の怒りは頂点に達しようとしていた。
その時────。
「そう言うのであれば、お2人が葵さんに勝てた場合は俺が稽古をつけましょう」
沖田のきっぱりとした一言が壬生寺の境内に響き渡った。
「何故僕が女子と……。
しかし、沖田先生がそう仰るのであれば!」
蔵之助は驚きつつも、憧れである沖田と稽古をすべく葵との対戦を決める。
その姿を見た愛次郎も木に立てかけてあった竹刀を掴んだ。
「ふふっ、そう来なくてはね。
時間が勿体無いから2人纏めて相手をするわ」
「「貴方、僕(私)達を嘗めてます?」」
「……それじゃあ沖田君、審判をよろしくね」
2人は納得しなかったが葵が試合の体制に入ったため、2人も渋々竹刀を構えた。
対面している葵と2人は目線で火花を散らす。
「始め!」
そんな緊迫した中、沖田の掛け声によって試合が幕を開けた。
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