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「申し訳ございません、葵さん……。
剣術の腕に性別なぞ関係無かった」
葵に詫びた愛次郎は余程反省したのか首を下に傾け、意気消沈している。
残りの2人も葵に向かって頭を下げた。
葵はそんな彼らを見て溜息をつく。
「(私も頭に血が上って新入隊士に手加減せずに稽古をしてしまった。大人気が無かったわ)
分かってくれたなら良いの。
今後どんな相手でも嘗めてかからないでね。
これが真剣なら、貴方達は死んでいたわ」
そして声色を元の高さに戻し、3人に優しく話し掛けた。その直後、沖田が彼らの傍に歩み寄る。
「葵さんと俺は互いに背中を預ける仲で実力も俺とほぼ同じなのですよ。 これからは、女子だからと言って見くびらないで下さいね」
3人は顔を上げると力強く頷き、蔵之助が声を張り上げる。
「はいッ! これからは誰が相手だろうと気を抜かず、真剣に立ち合います。
ですので今後も御指導よろしくお願いいたします沖田先生、そして……葵 "先生" ッ!」
3人は一斉に葵と沖田に向かって礼をした。
「私も先生!?
……畏まってそう呼ばれると、恥ずかしいわ」
葵は先程の沖田に負けない位に顔を赤く染めた。
その様子に、沖田と3人は口元を綻ばせる。
いつの間にか壬生寺の境内には穏やかな空気が漂っていた。
────この先、3人が葵に嘗めてかかる新入隊士を鬼の形相で叱る光景が見られるのは、また別の話。
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