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「沖田君、ついに隊服が出来上がったらしいわよ。 どんな出来栄えかしら!」
「まさかもう届くとはな。
早く見てみたい」
葵や沖田は勿論、他の隊士達も風呂敷に包まれた隊服の披露を心待ちにしており、部屋の中は隊士達の声で賑わっていた。
「注文通りにお作りしたさかい、皆様にえらい似合う仕上がりやと思います」
商人が皆の視線を浴びながら風呂敷を解く。
数秒後、中から現れたのは────。
"浅葱色" の羽織であった。
「「「………………」」」
その色を目にした瞬間今まで興奮していた隊士が嘘のように静まり返り、葵は心の中で叫ぶ。
「(あ、浅葱色〜〜ッ!?)」
「ハハハ、どうだ、これが俺達の隊服だ。
気に入った事だろう?」
そして芹沢の笑い声だけが部屋に響き渡った。
「(芹沢さん……。
失礼だけど、貴方どうかしてるわよ〜〜ッ!
この羽織を着ている私を父上や秀ちゃんが見たら、卒倒しそう。公務に用いるのにこんな色にするなんて、信じられないわ!)」
葵は涙目になりながら心の中で不平を言う。
基本的には何事に対しても寛容な沖田でさえ、顔を引き攣らせていた。
恐らく他の皆も葵と沖田と同じ心境であろう。
何故ならば────。
それ程まで、この "浅葱" 色が問題の色であるからだ。
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*浅葱色……ごく薄い藍色。現代では薄い青緑をこう呼ぶ事もある。
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