12. 覚悟の証

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「ああ、そうさ。この隊服は、仮名手本忠臣蔵の赤穂浪士(*あこうろうし)の隊服を真似たものだとも」 自慢げにそう言った芹沢に対し、ついに土方がゆっくりと口を開いた。 「芹沢先生よォ……。 歌舞伎の舞台衣装を着て市中を巡察しろと? 俺達はお巫山戯(ふざけ)のために京に来たワケじゃねェ」 そして凍てつく瞳で芹沢を睨む。 怒りを剥き出しにする土方に対し、芹沢は随分と余裕がある様で、未だに笑みを浮かべたままだ。 「別に俺は巫山戯(ふざけ)てねぇよ。土方、お前は "武士" としての浅葱色の意味を忘れちまったのか?」 「…………ッ! 」 土方は芹沢の問いに対する答えを見出したようで、彼に反論すること無く口を噤んだ。 「(武士……浅葱色の意味……)」 芹沢と土方のやり取りを聞いていた葵も、浅葱の意味を脳内で必死に考える。 やがて葵の脳内に1つの答えが浮かんだ時──。 「まさか!」 思わず声を漏らしてしまった。 ----- *赤穂浪士……元禄15年(1702年)12月14日夜、江戸で吉良義央(きらよしなか)を斬殺し、主君の仇を討った後に切腹した大石良雄(おおいしよしたか)をはじめとする46人をいう。 吉良義央は、江戸中期の幕臣。
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