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第1話
「美希は結婚するのには最高さ。でも、彼女としてはね……」
3年目の同棲が終わる頃に、健人が悪びれもなく言ったそれに、「ふうん」なんて素っ気なく答えた。
健人とは社会に出てから一緒に支えあった仲だ。確かに同棲生活3年も過ぎると、家族のような気持ちは大きくなるのはわかる。けど……。
◇
あの短い会話をしてから、健人は「友達と遊んでくる」と言っては週末帰ってこない。平日だって夜いないこともある。明らかに、複数の女の子の遊び相手がいるんだとわかるけれど、問い詰めたりはしなかった。
携帯電話に連絡をしてくる彼女らは、健人にとって真剣ではない存在だろうから。健人は、結婚するなら私が一番だと言っているんだから。最終的に私が選ばれるんだから……。月に1度抱いてくれているし、時折サプライズもしてくれる。突然花束を買って帰ってきて、甘い言葉をくれたりする。
「結婚するなら、君が一番さ」と。
私はきっと彼女達よりも彼女だもん……。頭の中で健人と一緒にいるための沢山の理由を作った。そうして本当の自分の感情――戸惑いや寂しさに蓋をした。フラフラと浮気ばっかりする健人を見て見ぬ振りをして1年過ごした今、閉じられた心の奥が黒く、重たくなった。息苦しい。本当の自分を無視することは、もうできないだろう。
別れなければいけないことは、わかっている。けど……。
土曜日――今日も、健人はいない。最近は、帰ってくる頻度も更に少なくなってきた。心の整理をしたくて、一人でドライブに出かけた。
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