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 大学時代から八年間付き合っていた江島君に振られたのは、半年前のことだった。私は結婚も考えていたのに、彼はそうではないようだった。美咲のことはもう好きではないから、と彼は申し訳なさそうに告げてきた。  八年間も付き合っておいて、なんて無責任な人なのだろうと思った。でも、私に何か落ち度があったのかもしれないと無理やり涙を堪えて、別れを受け入れた。大学時代から応援してくれていた友人達にも報告をして、沢山励ましてもらった。次に進んだ方が良いよと言われて、傷ついた心をなんとか奮い立たせていた。  それなのに今、目を疑う事態が発生している。事の発端は、大学時代からの友人の一人である間橙(まとう)百合音から、結婚式の招待状が届いたことだ。問題なのは、新郎の欄に江島君の名前が記されていたことだった。式場が、ほんの数ヶ月そこらで手配できるわけがない。  江島君が二股をかけていて、最終的に百合音を選んだということを、私はその時初めて知った。悔しさと悲しさと、全てのものに対する不信感で胸が埋め尽くされていく。そういえば最近、百合音は友人の集まりに参加していなかった。  今まで気づかなかった自分を殴りつけてやりたくなる。それ以上に、百合音への憎しみが体全体から沸き立ってきた。  彼女はどうして、今まで何も言ってくれなかったのだろう。百合音は私と江島君が付き合っているのを知っていたはずなのに。私だけ何も気づかないまま、弄ばれていたのだ。友人だと思っていたのは私だけだったのだろうか。  大学時代から付き合いのある他の友人たちも、このことを知っていたのかもしれない。私に味方なんていなかったんだ。心臓が締め付けられていって、胸の底がどんどん冷えていった。
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