4

2/3
前へ
/12ページ
次へ
 百合音からメールが来たのは、晴也の職場に訪れてから二週間後のことだった。  一体何が書かれているのか想像もつかない。一人で読むのは不安で仕方なかったので、晴也に連絡を取り、自宅で一緒に中身を見てもらうことにした。 「寂しくなって一線を越えてしまった……美咲には申し訳ないと思っていたけれど、江島君に対する気持ちが大きくなってしまった……か。言い訳ばかりで見苦しいな」 「でも最後、見て」  美咲に仕返しされても文句は言えないのに、あんなに素敵な花をくれるとは思わなかった。でも、私みたいに卑怯な人間にはそぐわないよ。許してもらえるとは思っていないけれど、本当にごめんなさい。  晴也は眉間に皺を寄せていた。一方、私はかなり落ち着いた心持ちでいる。   「罪悪感を抱かせるのは成功したけど、こんなメール一つで済むならやったもん勝ちじゃないか。憎しみをぶつけたがっていた先輩の気持ちが、今なら分かります」 「もう良いよ。二人と関わっても自分のためにならないことは分かったから。ただ、許すのは無理だし、返事をする気にもなれない。いくら言葉を重ねても、起きたことは変えられないからね」  メールを削除して、溜まっていた息を吐き出す。  これで、この件はおしまいだ。あの二人と関わることもない。 「晴也、難しい顔しないで。もう大丈夫だから」  晴也はふて腐れた表情のままだった。私の黒い気持ちに感化されてしまったのだろう。申し訳ない。   「分かってます。これは先輩の復讐だから。先輩の気持ちが晴れるなら、それが一番良いんだ」 「晴也はあの二人とは赤の他人でしょ。復讐に入れ込まなくて良かったんだよ」 「それは無理です。俺、先輩のことがずっと好きだったから」  晴也が真っ直ぐに私を見つめている。真面目で力強い声が心に響いて、心臓が跳ねた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

165人が本棚に入れています
本棚に追加