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「それ、いつから?」
「七年前からずっとです。でも、先輩にはもう恋人がいたじゃないですか」
「だから、もっと早く先輩に出会えていれば良かった……って言ってたんだね」
晴也は頷いて、穏やかな笑顔を浮かべた。
「先輩からお食事の誘いがあったときは、そりゃあ舞い上がりましたよ。当の先輩は別れた彼氏と元友人にご執心で、俺なんて眼中になかったみたいだけど。とっとと復讐を完遂させれば、俺に振り向いてくれるかもって思って頑張ったんですよ」
私は深く恥じ入るばかりだった。知らなかったとは言え、好意にかまけて彼を利用するような真似をしてしまったのだから。
「復讐に協力したんだから付き合ってくれ……なんて、卑怯なことを言うつもりはありません。安心して下さい」
晴也は胸ポケットから、透明な包みを取り出す。中には、白いマーガレットのイヤリングが入っていた。
復讐に使った『真実の愛』の花が、本来の意味を纏って晴也から手渡されたことに喜びを感じる。
「それ、俺の気持ちです。先輩にとって都合の良いように受け取ってもらって構いません。それじゃあ、失礼します」
離れようとする晴也の手首を掴んだ。私の答えは決まっている。気持ちを押し殺して協力してくれていた彼に、心惹かれるのは当然のことだった。
逸る気持ちを抑えて返事をすると、愛嬌のある懐かしい笑顔が私の瞳を照らした。
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