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 式を挙げたいなら黙って挙げていれば良かったのに、どうしてわざわざ私に招待状を送った? 私に対する見せしめ? 何も気づかずに別れを受け入れた私を今度こそ嘲笑うため?  もし別れの原因が私にあったのだとしても、こんな仕打ちはあんまりだ。だったら二股をかける前に別れてくれれば良かったのに。百合音も、私に謝罪もせずにこんなものを送り付けるなんて、本当に酷い女だ。最低。二人とも幸せになる権利なんてこれっぽっちもないのに。  絶対に許せない。仕返ししてやらないと気が済まなかった。涙はもう枯れ果てている。私の憎しみをどうにかしてあの二人に伝えてやる。自分達のみっともない行いを恥じて、後悔すればいい。  どうすれば彼らに思い知らせてやれるのだろう?  今になって、あざみが結婚した時に花を贈ったことを思い出す。希望と幸福の象徴、ガーベラ。あの結婚式はとても幸せだった。あざみが綺麗なドレスに身を包んでいて、参列者は全員笑顔で。百合音と江島君が、そんな幸せな空間に包まれるなんて許されない。世界が許しても、私が許すものか。 「――決めた。あの二人に不吉な花を贈る」 「不吉って……仏花とか?」 「違うの茉莉花、そういう意味じゃなくて。憎しみを表す花を贈るの。知り合いに花屋の店員さんがいるから、何か良いものが無いか聞いてみる。それを、この二人の招待状に書いてあった、新居の住所に送りつけてやるの」 「美咲、本気なの? そんなことしたら恨みを買って、何が起こるか分かったもんじゃないよ」 「茉莉花、何を勘違いしてるの。先に恨みを買ったのはあの二人の方。式を挙げるなら黙ってれば良かったのに、わざわざ美咲を招待するなんて、美咲のことを傷つける意図しか感じられない。結婚式はそんなふうに使われるべきじゃない。あたしは美咲の行動を支持する」  あざみの力強い言葉に後押しされて、私は決意を固める。二人と別れた後、目的の人物と連絡を取った。大学時代の後輩・須ヶ口晴也だ。誰かに花を贈る時――昨年、あざみへ結婚祝いの花束を贈った時も、彼に相談に乗ってもらったのだ。
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