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 私は事の顛末を簡単に伝えた。大学時代の友人に彼氏を奪われたこと。二人が結婚すること。よりにもよって私の元に結婚式の招待状が届いたこと。二人に裏切られたことが許せなくて、大きな憎しみを抱いていること。二人に贈る花は、『憎しみ』の意味を持つ花にしたいと思っていること。  晴也は頷きながら親身になって聞いてくれた。私が話し終えてからも、腕を組みながら真剣な顔で熟考している。  彼は職業上、花を使って人を傷つけようとする行為を咎めてくるかもしれないし、茉莉花のように計画の実行を止めてきてもおかしくない。それも仕方ないと諦めかけた時、晴也は神妙な面持ちで口を開いた。 「そういう花は探せば幾らでもありますよ。有名どころだと黒薔薇とかは、憎しみって意味を確かに持ってる。でも先輩。その花を贈ることが、本当に復讐になるのかな? 先輩は、憎しみの花を贈ることで、お二人にどんな変化を期待してるんですか?」 「私の憎しみを思い知ること。自分たちの行いを恥じて、後悔すること」 「望み薄だと思います。どんな行動を取ったとしても」 「どうしてそう思うの?」 「貴女が花を贈ろうとしている相手が、友人から男を掠め取る残酷な女と、誠実さの欠片もない軽薄な男だからです。少なくとも、貴女みたいな善人ではないんだよ。改心する見込みがありません」  晴也の冷えた鋭い言葉が胸を刺した。自分の考えが甘かったのだと思い知らされる。  思考が停止してしまった私を気遣いながら、晴也は言葉を続けた。
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