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「望み薄って言いましたけど、他より可能性の高い方法が一つあります。ただ、確実に成果が出るとは言えないし、先輩にはしんどい方法だと思いますよ」 「構わないよ。招待状が届いたときより、辛いことなんてないんだから。どんな方法なの?」 「当初の計画通り、花を贈ります。但し、『憎しみ』の花ではなく、『祝福』を表す花にするんです」  『祝福』という言葉に耳を疑う。思わず睨むと、晴也は今日初めて慌てた表情を見せた。 「先輩、俺は心から祝福しろなんて言ってないでしょ。手段として、ですよ。先輩の立場から健気に祝われたら――勿論ポーズですけど――少なからず罪悪感が生まれるはずです」 「私は貴方達のことなんて何とも思ってないから……あるいは、思っているけど頑張って祝福します、っていう意思表示をするんだね?」 「ええ。ただ、相手方が本物の悪人かただの馬鹿だった場合、『祝福』を真に受けて喜ぶ可能性もあるけどね。それも含めて確実な方法じゃないんです」  晴也はあくまで、私に判断を委ねるつもりのようだ。目的が明確になった今、少しでも可能性のある方法を取りたいと告げた。   「分かりました。相応しい花は俺が幾つか探します。先輩に探させるのは苦痛の素にしかならないから」    当初とは違う方法を取っていることに納得していない自分もいる。それでも、晴也に協力すると言ってもらってから、心の重荷が随分減ったことに気がついた。彼が気を回して、荷物を代わりに持ってくれているからだ。  心の中にあった黒い粘液の嵩が、減ったように感じられた。
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