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鳥籠 -3-
昨夜のオトコも、名前を思い出せなかった。
近頃、おかしな位に忘れっぽい。
忘れっぽいというより、記憶喪失。
「若年性痴呆症? ってヤツ?なんてね」
呟いて、くすっと笑ってみる。
笑うしかないじゃん。
名前を聞く機会がなきゃ、まず思い出せないなんて。
顔だけは何となく思い出せるけど、でも、大体同じに思えてしまう。
「なに頭抱えてんの?」
リハーサル室なんかで、しゃがんで頭を抱えてるあたしに、シュンが声をかける。
プレイの面でもそうだけど、シュンはあたしの様子には目ざとい。
友達って言うよりは、保護者みたいだ。
「うん、あのさぁ」
そう言って、昨夜のオトコの人相や体格や…まぁ、覚えてる限りだけど、それをシュンに説明してみる。
同じ業界の人間だったら、中学生で初めてバンドを組んだときから一緒にやってるシュンならわかるはず。
「…て感じ。知ってる? 誰だったっけ」
「……いや、知らない。そいつ、誰?」
黙り込み、顔を見合わせる。
「あれ? ただのロンゲ? どっかのチャラ男?」
「じゃないの?」
あたしが節操がないことくらい、あたしだって自覚してる。
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