5人が本棚に入れています
本棚に追加
鳥籠 -1-
いつだって、空は遠くにあった。
何となくやる気の出ない、日暮れのリハーサル室。
高校生の頃から、特に理由もなく手放せないギターをチューニングする。
この、元からすすけたゴールドにペイントされたギターは、あたしの唯一の差し色だ。
衣装はもちろん、プライベートでも身に付ける色は黒。
肩までの髪も黒いまま。
アイカラーも、瞳も黒。
ただ、ギターとアクセサリーだけはゴールド。それも、少し古ぼけたような、冴えない輝きのものがいい。
「アヴリル・ラヴィーンとか好きですか?」
そんなインタビューを幾度か受けた。
だけど、アヴリルなんてあたしは知らない。
あたしは、朱だ。
山田朱。
ギタリスト。
Burmeseでツインギターの片っぽをやってる。
てんで上手くない。
上手くなる気もさらさらない。
ただ、ステージでライトを浴びることが好きなだけ。
でも、案外あたしの好き勝手な振る舞いは面白がられてて、Burmeseのアイコンになってしまている。
Burmeseっていうのはうちらのバンド名。
最初のコメントを投稿しよう!