鳥籠 -1-

1/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ

鳥籠 -1-

 いつだって、空は遠くにあった。  何となくやる気の出ない、日暮れのリハーサル室。  高校生の頃から、特に理由もなく手放せないギターをチューニングする。  この、元からすすけたゴールドにペイントされたギターは、あたしの唯一の差し色だ。 衣装はもちろん、プライベートでも身に付ける色は黒。  肩までの髪も黒いまま。  アイカラーも、瞳も黒。  ただ、ギターとアクセサリーだけはゴールド。それも、少し古ぼけたような、冴えない輝きのものがいい。 「アヴリル・ラヴィーンとか好きですか?」  そんなインタビューを幾度か受けた。  だけど、アヴリルなんてあたしは知らない。  あたしは、(アヤ)だ。  山田朱。  ギタリスト。  Burmeseでツインギターの片っぽをやってる。  てんで上手くない。  上手くなる気もさらさらない。  ただ、ステージでライトを浴びることが好きなだけ。  でも、案外あたしの好き勝手な振る舞いは面白がられてて、Burmeseのアイコンになってしまている。  Burmeseっていうのはうちらのバンド名。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!