鳥籠 -1-

3/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
 で、今のとこ唯一のオトコ。  ギターのシュン。あたしの相方。もう一人のギタリスト。  ヘタクソで、しかも、それを克服するやる気もないあたしのフォローに回って、すごく真面目に弾いてくれてる。  切れ長の奥二重はちょっと色っぽい。  ふんわりと、いつも綺麗に立ててる茶金髪も、さりげなく欠かさない、右手の親指のネイルもヤツのオシャレ小僧ぶりを示している。  うちで女の子ファンの人気を独占…とは行かず、バレンタインはいつもハルカと接戦だ。 「ねー、ハルカぁ! まだなの?」  柚莉が、ハルカにピックをぽいぽい投げつけながら問いかける。 「もうちょっと! 多分!」  多分の割には、きっぱりとハルカは答える。  あたしたちが待っているのは、新しいヴォーカリストだ。  1週間前に、前のヴォーカルが田舎に帰るとか言って、いきなり辞めて行ってしまったのだ。  柚莉がどこからか聞いて来たハナシだと、地元にいた遠恋の彼女が妊娠しただのなんだの。  辞めたヤツのことなんかどうでもいいけど。  それより、半月後に迫っているワンマンライブの方がよっぽど問題だ。  初めてではないけれど、数ヶ月に一度しか巡ってこないワンマンライブ。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!