5人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
夕方、アパートに帰ると、柚莉がテレビを見ながらポテトチップスを勝手に開けていた。
「柚莉、それ勝手に開けないでよ」
頬を膨らませ、ポストから取ってきていたチラシで柚莉の頭を軽く叩く。
柚莉はそんなことも気にかけない様子で、軽く首をかしげながらあたしに袋を差し出す。
「食べる?」
「今いらないよ。何しに来たの?」
「可愛い柚莉ちゃんが来て上げたのにぃ。歓迎してよ」
柚莉とは別のアパートに住んでいる。
あまり離れていないのだけど、バンドでも会うし、そんなに家を行き来することはない。
とはいえ、お互いこの辺で唯一の身内。合鍵くらいは持ってる。
「何か用じゃないの?」
なかなか来ない柚莉が来るのだから、何か用があるのだろう。
「今日さぁ、誰だっけ? あの、ほら…背が高くって…エグザイルのアツシみたいなスキンヘッドでさ」
「誰?」
「んーと…彫り深くって、くどい感じで」
「だから誰」
「名前思い出せないから説明してんじゃん! そんで、ほら、ここにタトゥ入れてた! コウモリみたいな」
柚莉はそう言いながら、つまんだポテトチップスで鎖骨の辺りでくるくると輪を描く。
それで、やっと思い出した。
最初のコメントを投稿しよう!