「棺の中のオフィーリア」

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*******  ここまで読んで、美恵子は顔を上げた。 「レポートっていうより、小説みたいだね」 「うん、その方が書きやすくて。坂野も別に文句言わないと思うし」  私は答える。坂野とは私たちがいる英文学科のゼミの教授だ。私は『ハムレット』についてのレポートを今度ゼミで発表することになっている。発表の前に、仲のいい友人の美恵子に、レポートを読んでもらっていたのだ。 「私、『ハムレット』はあんまり好きじゃないんだよね。同じシェイクスピアなら『夏の夜の夢』みたいな喜劇の方が好きかな。四大悲劇ってどれもあんまり……」  美恵子は明るいタイプなので、さもあらん。でも私は『ハムレット』に心酔している。レポートの当番が回って、俄然やる気が湧いてきたのだ。  
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