「棺の中のオフィーリア」

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*******  暗い。  けれども、この世のものでなくなってしまった私には、かえって明瞭に、これまでも、そしてこれからも、全てのことを見透せる。  前王ハムレットさまが、地獄の責め苦に苛まれておいでなら、私にもそれが与えられてしかるべきなのに……けれどなぜか私にはその予感はない。むしろここで永遠に、ハムレットさまとお兄さまと共にあることができるのだと確信している。  あら、外が騒がしい。  お兄さまとハムレットさまが、私の墓穴へととび込んで、何やらケンカを始めたらしいわ。  お兄さまたら、オリュンポスの峰が云々などと、そんな仰々しいことをおっしゃって……ハムレットさままで。気恥ずかしいわ。  お二人は、私への愛の深さを争っておられる。  私は、そのような価値のある者ではないのに。せめてすみれの花が一輪、咲いてくれれば、それでもう望外の幸せなのに。
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