「棺の中のオフィーリア」

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*******   「なんか、オフィーリアって、有名だけど、実際読んでみると影が薄いよね」  美恵子はまた顔を上げる。 「そうなんだよね。言われるがままって感じ。有名なのは、絵画の影響があるんじゃないかな。ジョン・エヴァレット・ミレイの『オフィーリア』とか、ラファエル前派が好んだ題材だよね」 「うんうん、あの小川に落ちて溺死した姿ね。花々に囲まれて。あの絵は私も大好き。だから、オフィーリアってすごく印象的な女性なのかって思っていたんだけど、原作を読むと、おとなしくて受動的。兄にも父親にも言いなりになって。今ははやらないキャラクターって気がする」 「ハムレットに『尼寺へ行け』と言われてもなんか、パッとした反応ないしね。でもね、この物語を表から見ているのがハムレットの親友のホレイショーだとしたら、裏から、ううん、蔭から見てるのがオフィーリアだって感じがするの。それで、このレポートの構想が立ってきたわけ」
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