「棺の中のオフィーリア」

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*******  ああ、おいたわしい。私には分かる。  ハムレットさまとお兄さまは、いずれ近いうちに殺し合いをなさる定め、なぜ神は、このような残酷な定めを課されるのでしょう。  本当は親友になれたはずのお二人。  ハムレットさまは冷徹で、決して信念を曲げないお方だけれど、その底には美しく繊細な真心がある。その鎧をほんの少し外すことのできる気質をお持ちであったならば。  そしてお兄さまは、狂熱に侵されやすい気質をお持ちだけれど、根はとても真っ直ぐでお優しい方。  お二人はコインの裏表のように、実はとてもよく似ておいでなのです。  それに、なんという皮肉か。ハムレットさまは、伯父上に父王を殺され、お兄さまはハムレットさまにお父さまを殺されてしまった。  正反対のようでいて、合わせ鏡のようなお二人。そして共に、私を深く愛してくださった方々。  止められるものなら、止めて差し上げたい。  けれど、ああ、私には何もできないのです。  この世のものならずして、この世の先を知ってしまうとは。カッサンドラの苦しみを味わおうとは。
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