「棺の中のオフィーリア」

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******* 「なんかさぁ、ハムレットってこういうキャラだっけ?」  美恵子が遠慮なく言う。 「『冷徹で信念を曲げない』かぁ? ぐじぐじ迷ってばっかりいるひ弱なイメージなんだけど」 「よく『優柔不断』の代名詞みたいに言われてるよね。でも、そうなのかな、と私は思ったわけ」  私にとっては我が意を得たりだ。 「前の王様だった父親の亡霊に、父の死の真相を聞かされて、ハムレットはすぐオフィーリアのところに行ってるんだよ。そのシーンは、ぼろぼろの恰好で、オフィーリアの手をとって何も言わず、思いつめた目をして去っていく。 私はもうすでにハムレットは復讐の誓いを立てていたんだと思うんだよね」 「はあ、ちょっと待って」 美恵子は自分の文庫本の『ハムレット』を取り出してページを繰る。 私の本の方は、付箋がびっしりと挟まっている。
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