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Marie はマリアになった。
今日もまた、いつもの夢を見た。
私の最愛の番の夢だ。
最後に見たあいつは私の大好きな天の色でなく、泣いた…朱い鬼だった。
歯を磨き洗顔し鏡を覗く。
一瞬、銀髪に銀目の現実離れした非常に美しい男が映る。
…それは幻ですぐに消え、少し泣き腫らした紫の目に金髪のくたびれた女が映った。
フランスの貴族の流れを汲む家に生まれた、医者で遺伝子工学の研究をしている女、Marie だ。
女性らしい曲線や、持て囃されるような容貌に恵まれてはいるが、恋人や伴侶などを求める気はさらさら無い、つまらない女。
あの頃とは本当に違う。
…そろそろ、子どもたちも起きてくる。
急ぎ、支度をしてキッチンへと向かう。
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