002 : 天井楼閣

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「クロワさん… この塔には入り口が見当たらないのですが…」 「そうなんです。 この塔には入り口がないんです。」 「入り口がない…?」 クロワの話によると、この塔は誰がなんのために建てかものなのか、どういう機能を持つものなのか、そんなことは誰も知らないという。 ただ、「時と選ばれし人間」がここを訪れた時に、塔はよみがえると信じられているらしい。 胡散臭い話だ… そう思い、私はまた念入りに塔のまわりを調べてみたが、やはりどこにも入り口らしきものはみつからなかった。 おそらく、どこかの頭のおかしな建築家が造ったものなのだろう。 それが、長い年月を重ねるうちに面白おかしく伝説化されただけなのだ、きっと… そもそも、入り口なんてものは最初から作られていないのだろう… 私達は天井楼閣を後にし、やがて、森を出た。 ここから先はクロワもまったく知らない土地だ。 幸い道は一本しかない。 まずは、この道なりに進んでいくことにしよう…
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