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「クロワさん…
この塔には入り口が見当たらないのですが…」
「そうなんです。
この塔には入り口がないんです。」
「入り口がない…?」
クロワの話によると、この塔は誰がなんのために建てかものなのか、どういう機能を持つものなのか、そんなことは誰も知らないという。
ただ、「時と選ばれし人間」がここを訪れた時に、塔はよみがえると信じられているらしい。
胡散臭い話だ…
そう思い、私はまた念入りに塔のまわりを調べてみたが、やはりどこにも入り口らしきものはみつからなかった。
おそらく、どこかの頭のおかしな建築家が造ったものなのだろう。
それが、長い年月を重ねるうちに面白おかしく伝説化されただけなのだ、きっと…
そもそも、入り口なんてものは最初から作られていないのだろう…
私達は天井楼閣を後にし、やがて、森を出た。
ここから先はクロワもまったく知らない土地だ。
幸い道は一本しかない。
まずは、この道なりに進んでいくことにしよう…
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