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森を抜けてからは何もない道が延々と続いていた。
なにもない…と、いうのは私から見ての話で、クロワは目を輝かせて道端の草を採っていた。
なんでも、このあたりには今までみつからなかった貴重な薬草が自生しているそうだ。
「これがあればあらたな薬が作れます!」
クロワは顔をほころばせ、元気な声でそう言った。
あの小屋を離れてまだそれほどたっていないというのに、クロワは小屋から遠ざかるにつれ、それに比例するように明るく元気になってきている。
その変化は大きく、まるで別人のようにさえ感じられる。
あそこでの暮らしは、こんなにもクロワの心を蝕んでいたのだろうか…
(…本来の彼女は、明るい性格だったのかもしれないな…)
私には相変わらず特に出来ることはなく、クロワの手が届かない所の薬草を引き抜いたり、集めたものを担ぐ位のことだった。
「マルタンさん、大丈夫ですか?
重いでしょう?」
「私なら大丈夫ですよ。
むしろ、こんなこと位しか出来ずに申し訳ない…
しかし、あなたはどなたからこんな薬草の知識を学んだのですか?
ご両親がこのようなお仕事をされていたのですか?」
「いえ……両親は私がまだ幼い頃に亡くなりましたから…
その後、私を育ててくれたおばあさんに教えていただいたのです。」
「そうだったのですか…
幼い頃にご両親を…
立ち入ったことをお聞きして、すみませんでした。」
「いえ…お気になさらないで下さい。」
「おばあさんは薬師さんだったのですね。」
「…ええ…
…ですが、おばあさんは村では『魔女』だと呼ばれていました…」
「…魔女……?」
「おばあさんには、少し不思議な力があって…
先のことを見通す力です。
これから起きることがわかる力です。
そのために、おばあさんはそんな風に呼ばれていたのです。」
「そうだったのですか…」
彼女の暗さの原因を知ってしまったような気がした。
きっと、その祖母のせいで、魔女の孫としていじめられてきたのだろう…
「おばあさんは本当に優しい人でした。
村の人の病気や怪我を治すために薬を作り、みなしごになった私を引き取って育ててくれたのに、村の人達は魔女だなんて…」
「実のお祖母様ではないのですか?」
「えぇ…
でも、まるで実の子のように可愛がって下さいました。」
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