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次の日、少しだけ落ち着きを取り戻した私は、女から話を聞いた。
一週間程前の嵐の次の日、私は血だらけで近くの浜辺に打ち上げられていたらしい。
おそらくは、船に乗っていたのではないかと女は推測していた。
私はかなりひどい傷を負っており、長い間意識も戻らなかったため、女ももう駄目かもしれないと思っていたようだ。
すぐ近くの村には医者がいるらしいのだが、金がなくて診てもらうことが出来なかったと女は私に涙を流して詫びた。
別に彼女が悪いわけでもないのに、まるで自分の罪であるかのように、女は私に何度も頭を下げた。
「こうして助かったのもあなたのおかげではありませんか。
感謝こそすれ、あなたに詫びてもらうようなことではありません。」
「いえ…
お医者様にすぐに診てもらっていたら、記憶がなくなるなんてこともなかったかもしれないのに…」
「そのことなら心配しないで下さい…
きっと、頭を打った時のショックで一時的に忘れているだけなんでしょう。
何かのきっかけで、失われていた記憶が戻ったという話は山ほどありますよ。」
私は元々楽観的な方ではない。
むしろ、なんでも悪い方に考えることの方が多い。
記憶を失ってるくせにそんな風に思うのもおかしな話だがなぜだかそう思った。
多分、そうした方が、最悪の事態を迎えた時にダメージが少なくて済むからなのだろう…私はダメージに弱い人間だったのだ、きっと…
しかし、私は口では心とは裏腹なことを言っていた。
そう言った方が、女も気が楽だろうし、そして、私にもそう思いたい気持ちがどこかにあったからだろう…
女は私の言葉に安心したのか、ハンカチで涙を拭いながら少しだけ微笑んだ。
私もそれにあわせて小さな微笑みを返した。
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