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「あぁ、生き返った!
おやじさん、うまかったよ、ありがとう!」
宿に着いた私達は、すぐに食事を採った。
昼食にしては遅過ぎ、夕食にしては早過ぎる時間だったためか、食堂には私達しかいなかった。
「そりゃ良かった。
あんたらはどこに行くんだね?」
「どこってあてはないんだ。
そういえば、おやじさん、海底神殿って聞いたことはあるか?」
「海底神殿?
いや、そんなものは聞いたことがないな。
海底に神殿があるっていうのかい?」
「そうか…いや、別にたいしたことじゃないんだ。
そうだ、おやじさん、このあたりに変わったものとか面白い場所とかはあるか?」
「そうだなぁ…あるにはあるんだが…
あ、あんたらは夫婦なのかい?」
宿の主人の視線は、並んで座るクロワとクロードに注がれていた。
「いえ…ただの旅の仲間です。」
即答するクロワに、クロードがなんとも言えない顔をしていた。
「そうか…そいつは残念だな。
実は、この先に、誓いの丘って呼ばれる場所があるんだ。
星が綺麗に見える丘でな。
なんでも、大昔に恋人達がそこでお互いを一生愛しぬくという誓いを立てた所、星の神様が降りて来たとかいう言い伝えがあって、そこで誓いを立てた者には星の神の加護が得られるとかいわれてるんだ。
恋人達や夫婦がよく来てるよ。」
「誓いの丘か…
そこは、愛の誓い以外でもかまわないのか?」
「そりゃあ、もちろんさ!
一生をかけてやり抜く意思があるのなら、それを誓ってくれば良いんじゃないか?
あんた、なにかそういうことがあるのか?」
「…まぁな。」
「そうか、なら、ぜひ行って来ると良いよ。
ただ、夜はカップルがいっぱいだから、どうせならうんと遅い時間に行った方が良いよ。
そうじゃないと妬けるだろ?」
宿の主人は、そう言いながら笑いながら奥の部屋へ戻って行った。
「チェッ…なんだ、あのおやじ…」
「良いじゃないの。
リュックには、ナディアさんがいるんだから…」
「えっ?リュックさんには決まった方がいらっしゃるんですか?!」
「ええ…リュックにはもったいないようなすごい美人ですよ。
な、リュック!」
「そ…そんなこと、どうなるかわからねぇだろ!
長く離れてたら、気持ちが変わる事だってあるんだし…」
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