悲しみの春模様

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悲しみの春模様

着いた先...そこは私の領域ないに存在する神社だ。大きなものでは無いが周りは花々が咲き誇っている。あきひろはずっと周りをキョロキョロし、目を大きく開けて両手でギュッと胸元の服を掴む。うぅぅ〜と目元から大きな涙を流しその場にしゃがみ込む。 「なっなんでぇ、連れでぎだのぉ..?」 「すまなかった。だが、何か理由があるのだろう?なぜあんな所にいた?」 「嫌だ!!!もう僕は離れたくない!!もう1人は...1人は嫌だぁぁあ!!!!」 あぁ、この子は.. 「大丈夫だ」 私はそっと彼を抱きしめゆっくり、ゆっくりと背中を撫でる。 「大丈夫だから、話せ」 「うっ...うっう。僕...いつの間にか幽霊なってて、お迎えが空から来て、しにがみさんが僕を連れていこうとして..それで...」 「..それで?」 「お母さんも居ないから怖くなって..神社に連れてかれて逃げて...うっう」 「わかった。よく言えたな」 頭を優しく撫でる。私の服の袖を掴むあきひろの手は少し震えている。 「あきひろ、少し酷だが聞いてくれるか?大事な話だ。」 「...うん」 「あきひろ、この神社にはその死神達は居ないよ。ここは私の領域内、つまりお家だ。大丈夫..ただ、あきひろのお母さんはまだ幽霊にはなってないからあきひろとは一緒に行けない。わかるか?」 「でも僕寂しい...」 「一緒に行きたいのもわかるがダメだ。」 「なんで!!神様は願いを叶えてくれるんでしょ!!」 「すまない、こればかりはダメだ。難しい話になるが神様は人の死を決めることを許される存在ではない。それが出来るのは人だけだ。」 「...どういうこと?」 「そうだな、例えば人が将来サッカー選手になろう、この学校に入ろう、こんなことをしようと考えればそれはその人自信が選んだ道だ。人が死の道に近ずいて行くのはそのいくつもの分岐点があって成り立っている。言わゆる1本の大木と人生は考えればいい。人1人に1本の大木を持ち、その人にはその人の人生がある。そう簡単に大木は折れるものではない。」 あきひろの瞳には大粒の涙が溜まり苦しそうに耐えている。私はしゃがみ込み、あきひろと目線を合わせる。 「じゃあ僕はどうして折れたの?」 「あきひろは何故死んだんだ?」 「...車に引かれて」 「あきひろの分岐点はそこを通るか、通らないかだ。それで折れてしまったんだろう」 「それじゃあ!!」 「理不尽だと...言うのだろ?そういうものなのだ。日本では多くの事故が起こっているがそれはどれも理不尽であるものばかり。運転手はのうのうと生き、跳ねられた人は決して帰っては来ない。それが世の理であり、世の理不尽差なのだ。そして、それは人々の分岐点で決まる。全て奇跡に等しい。あの人がああしていればこうだったかもしれない、この人があの人と話し合えば分かり合えるかも等。全て人々が選び決めることで、数々の人生は変わっていく。その中で、あきひろはこの分岐点を選び折れてしまった。それだけの事なのだ...」 「じゃあ、お母さんは」 「まだ折れてはいない。あきひろのお母さんはまだ生きて行くのだろう。あきひろはお母さんに幽霊になって欲しいか?」 「...欲しくない」 「そうだな..」 私はあきひろを抱きしめ、頭をゆっくりと撫でる。怖かっただろ、苦しかっただろうに。人は生まれながらにして平等であるはずが、何故死ぬ時は平等でないのか...数々の分岐点は全て同じ事柄のはずなのに何処か違う。一人一人違うことから十人十色と言う四字熟語があるがまさにそれだ。 平等でない限り、人は争い、憎しみ、苦しむことが多いだろう。この子はそれをわずか7歳で知ってしまった。世の理を...理不尽差を.. 「こんな不甲斐ない神ですまなかった。人の子、あきひろ」 あきひろは無言で私に目線を交わす。 「そなたは、私が責任をもって天へと届けよう。だから、最後に母に会いに行こう」 「...え、ほんとに?いいの?」 「うむ、しっかり掴まってるんだぞ?」 「はい!」 私はパチンと指を鳴らし、鈴の音と花弁をその場に残し領域内から出た。
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