つむじ風

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つむじ風

つま先に風の子がまとわりついて、 そろりそろりと行くはずが、 スキップなんぞしてしまう。 旅立ちの朝である。 見慣れた街で、 見慣れた人と、 見知れた一日を送るだけの、 ひとめくりの旅に過ぎないが、 昨日と違うひと味は、 一歩、一歩と湧いてくる。 踏み出すことに意味がある。 いざゆかん。 敵も味方もあるものか。 私でいるということが、 もっとも強い旗なのだ。 足を大きく蹴り上げる。 電信柱が揺れるたび、 風の子 くるくる上機嫌。 旅路の途中である。 床屋の窓も、 猫のしっぽも、 道すがら横目で拾ってゆくだけの、 ひとかけらの場面に過ぎないが、 二つと同じ一歩など、 あってたまるかと息荒く。 繰り返すことに意味はある。 いざゆかん。 草原の丘に立つように、 心の声を聞くことが、 揺るぎのない芯となる。 旋回の影を落としてゆく鳥の、 翼の先に狙いをさだめ、ストローク。 そらっ! 風の子を宙に飛ばすのだ。
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