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「そのカレー、どんな味? ソーダの味?」
やや恐る恐る僕は聞く。
「ううん、ふつうのカレーだよ。おいしい!」
「ふうん」
食事の後、僕たちはまた丘に沿った遊歩道を歩いた。同じ花が一面に咲いているだけなのに、まったく飽きがこない。それだけでも僕には新鮮な経験だった。たまに、違う花が咲いている。ピンクの可憐な花だ。
「これは?」
「レンゲだよ。珍しい」
「へえ、これがレンゲなんだ」
思い切りいい空気を吸って、陽がかげってきた頃、僕たちは公園を出て予約している観光ホテルに向かった。美沙の大きな荷物は僕が持った。
ホテルの部屋は、6畳ほどの和室だった。ごく普通のつくりで、テーブルの上にお茶のセットとお菓子がある。仲居さんが出ていくと、美沙が僕に抱きついてきた。
「二人でゆっくりできるの、久しぶり!」
僕も美沙の肩を抱いて、軽くキスをした。本当はネモフィラの中でそうしたかったけれど、周りに人が多いんで、我慢していたんだ。
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