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「ねえ、浩人、痩せた?」
突然美沙が聞いてきた。浩人というのはもちろん僕の名である。
「そうかな、忙しかったし、緊張してたから、ずっと」
「仕事、大変みたいだね。いくらでも私に愚痴っていいよ」
その言葉はありがたいが、本当にきついことは言葉にできないタチなんだ。
「いや、それほどでも」
僕は言葉を濁した。
美沙は駅弁のエビフライを一番最初にぱくついていた。好きなものから食べるほうらしい。僕は逆だ。好きなものは後に残す。僕もエビフライが好きなので、それは最後に残していた。でもふっと、気がついて、言ってみた。
「僕のエビフライも食べる?」
美沙は目を丸くした。そして笑った。
「やだ、どうしたの? そんな、痩せちゃった浩人から奪う気なんてないよ」
僕はやや気をそがれながら、エビフライを口に運んだ。
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