ネモフィラ

　目的地に着いたようだ。次の駅名がアナウンスされると、美沙は網棚にのせていた荷物を下ろした。荷物はやけに大きい。たかが一泊なのに、女の子はいろいろ持ちたがるみたいだ。
　小さな駅前からは公園行きのバスが出ていた。季節がら増発されているみたいで、次々と発車していく。僕たちも少しだけ待ってそのバスに乗った。
　正面に何かが開けた。それが目的地だと気づくのに時間はかからなかった。思っていた以上にだだっ広い公園だ。
　お金を払って敷地内に入っても、例の青い花は見当たらない。点在する花壇はきれいに植えこまれてはいるが。
「あ、あのおもちゃみたいな電車、あれにのると園内を周れるみたいだよ」
　マジかよ。本当にでかい公園だ。
　おもちゃみたいではなく、おもちゃなのだが、ちゃんと人を乗せて走るので、用を果たすようだ。僕はやや気恥ずかしい気分になりながら、美沙と並んで座席に座った。