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なんだか照れ臭い気持ちでおもちゃの電車に揺られていく。しばらくは松林が続く。海岸が近いそうだから、それで松が多いんだろう。そういえば、春のさわやかな風に、潮の香りが混じっていることに気づいた。僕はネモフィラより、海が見えるんじゃないかということに期待を持った。
美沙は自然に微笑んでいる。いかにも気持ちがよさそうで、僕はうれしくなった。やっぱり、美沙を喜ばすためだけでも、この小旅行につき合ってよかったと思う。
しばらくお互い黙って、景色を満喫していた。
電車はどんどん走っていく。やがて、視界の中に水色のじゅうたんみたいなものがちらりと写った。
「あ」
僕は声を上げた。美沙も僕を見る。
「もうすぐよ」
美沙は嬉しそうに言った。
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