ネモフィラ

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 僕はあんぐりと口を開けた。「見晴らしの丘」と名付けられたそれは、一面真っ青に染まっているのだ。そして遊歩道を歩く人たちの姿が豆粒のように見えもした。  見上げると、空の色とその青い花のじゅうたんは、完全に同色のように見えた。まるで丘そのものが空に浮かんでいるように見えるのだ。  美沙は小走りに駆けだした。僕がついて行かないのを見ると、振り返って「早く早く」と促した。僕はつられて駆けだした。  人が多くてすんなりとはいかないが、遊歩道に入って、丘のてっぺんの辺りを目指して歩く。  近づくと、真っ青な花は、確かに美沙の言っていた通り、陽光を受けて、その一つ一つが光っているように見える。  一つ一つは親指と人差し指で輪をつくったくらいの、大きくもなく小さくもない花だった。花弁は本当に真っ青で、少し中央が白くなっている。それが遠くまで広がると、まさにいい具合に今日の空の色と一体になるのだ。
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